LibreGraphicsWorld の MyPaint 1.0 の記事

MyPaint というお絵描きソフトウェアがバージョン 1.0 になりました。 おめでとう。 先週のものになりますが、 LibreGraphicsWorld にインタビュー記事が載ったので、 全文の和訳を拙文ながらご紹介します。

MyPaint 1.0: こんなすごいのみたことない

(http://libregraphicsworld.org/blog/entry/mypaint-1.0-there-can-never-be-too-much-awesomeness :原文 MyPaint 1.0 there can never be too much awesomeness: Alexandre Prokoudine 2011年11月24日)

フリーソフトウェアの売り込みという文脈でバージョン 1.0 といえば、 その便利さは切りのいいバージョンをやみくもにありがたがる常識からも飛び抜けている。 ともかく、 ここに MyPaint v1.0 が現れた。 似たようなものはいっぱいあるけど、 こいつは俺の嫁にするぜ。
0.9.1 から 1.0 までに加えられた変更をひとつひとつカバーしようという考えが冗談に思えたほどのことはある。 いっちょ言わせてもらおうか。 期待したものが突拍子もない(wild)ことだったら最大限に狂って(wild)みたらどうかってね。 わぅーーぅ! ウィルバー!
メニューバーは初登場のツールバーに埋め込めるようになった。 色・ブラシ・基本ブラシ設定のパレットがスライドして出てくる。
図1
ダイアログは右サイドバーにドック入りしている (デフォルト) けど、 ドラッグで着脱できて、 縮めれば表題だけのバーにも変わる。
レイヤーダイアログに新しいアイコンが加わって合計 5 種類のブレンドモード (標準・覆い焼き・焼き込み・乗算・スクリーン) が使えるようになった。
図2
MyPaint にスクラッチパッドが追加されて画像でもブラシストロークでも何でも貼れるようになった。 この上で色のパレットだって展開できる。
図3
環境設定ダイアログでマウスボタンとかのポインタデバイス動作が設定できるようになった。
図4
大抵のことは http://mypaint.intilinux.com/?p=621 :公式アナウンス がカバーしているのでそっちを見たほうがいいだろう。 ソースコードhttp://mypaint.intilinux.com/?page_id=6 :download のところにある。 Windows 用と Mac 用は準備中。
MyPaint がほとんど知られてなかった 2009 年の中頃を思い返せば、 ほんの数ヶ月後にこのプロジェクトの知名度がいきなり天井破りになるなんて予想は当時不可能に近かったと思う。 ジャーナリストは遠慮しないという偉大な伝統にあやかって David Revoy 氏と開発者の Jon Nordby 氏に凸をかまし、 旧き佳き 2009 年と現在のことや、 将来の開発計画について聞いてきた。

(私) あの http://vimeo.com/groups/alchemy/videos/6143607 :Lizard time-lapse 以降ずっと開発が随分アーティストが形にしたとおりに進んできていて興味があるんです。 そこで David さん、 あの 2 年前まだ MyPaint がプログラマープログラマーによる何かとしか言いようがないアプリだった頃に、 どんなアハ体験があったんですか。 :)
(David) いやいや、 そんなことないよ。 MyPaint は全然「プログラマープログラマーによる」みたいなものじゃなくてスイスイと速いアプリだったし、 おまけにすごく賢くてつっかかり無くフルスクリーン作業ができる優れものだったよ。 Martin には一番感謝している。 MyPaint のデザインは「プログラミングの技能が非常に高いアーティストによる、 デジタル化絵画に没頭したいアーティストのための」ものになってきていた。
僕のアハ体験はそのちょっと後でオープンソースの 2D アプリをひととおり勉強しだした 2008 年ごろにあったんだ。 そのときやってみたいアプリケーションはたくさんあった。 GIMPGPS、 Krita、 Gogh、 DrawPile、 Flowpaint、 Qaquarelle などなど、 そして MyPaint だね。 バージョン 0.6 を入れてて、 このソフトウェアで絵描きを楽しみたいがためだけに来る日も来る日も Linuxパーティションをブートしてた。 使い心地やキーボードまわりとかの人間工学的なところはどれもこれもが当時の WindowsPainterPhotoshop よりはるかに良かった。
図5 (むかしむかしの MyPaint 0.6 - 略)
僕の CG の生徒用にデモも行なうようになった。 最初の僕のブラシキットはこのあとまもなく必要に合わせて作ったんだ。 それから Sintel の中心チームに加わった。 この数ヶ月あと 2009 年の始めに僕は完全に Linux Mint に鞍替えした。 ずっとそのときからスクリーンショットを撮っている。
(私) バージョン 0.7.1 と 1.0 の間がほとんど二年以上開いていて上級ブラシ設定ダイアログを開いたら両者が全然違うアプリケーションみたいになってました。 ユーザーインターフェイスや機能はもう満足してますか、 それとももっともっとやらなくちゃいけないことがあるんでしょうか。
(Jon) 個人的に注目しているのをひとつ挙げると固定サイズのキャンバスで付加的に作業する機能だね。 1.0 だとこの機能は一部分の実装に留まっている(ファイル-->文書フレームを参照)のがあんまりうれしくないところさ。 :)
ユーザーインターフェイスでいえばキー領域に改良の余地があると思う。 具体的にいうと、 上級ブラシ設定ダイアログはこれでもまだ解り易くなってない。 それに、 たぶん 1.0 特定で、 ブラシや色やブラシ設定なんかの単純な変更作業があちこちに分散し重複してるところもね。
図6 (MyPaint 1.0、 作: David Revoy - 略)
(David) Jon に全面賛成。
(私) コミュニティ全体がこのプロジェクトのおかげで得た最強の貢献といえば OpenRaster ファイル形式の開発に活発な取り組みで、 GIMP で読み込み・保存ができるところまでいきました。 ORA とかフリーなアプリのサポートはいわゆるデジタル化絵画にとって充分満足できる内容でしょうか、 それとも痛恨のミスがありそうですか。
(Jon) GIMP のリリース版で OpenRaster のサポートが外れたことが、 外の世界で動作させようとして大きな革新にいきそう (訳不安)OpenRasterのサポートがGIMPのリリースバージョンに取り込まれることで、素の状態でも扱えるようになるのは大きな進歩だ*1。 もうあとちょっとで実現するみたいなんだ、 うれしいね。 でもサムネイルのサポートみたいな基本的な便利機能がどのプラットフォームでもいまだに水準に満たない出来だよorz。 まあデスクトップ環境ごとにやり方がそれぞれ違ってるのが理由なんだろうけど。 フリーソフトウェア界で目下最大の関心事といえば Nautilus のサムネイル機能サポートが GNOME 3 になってから暫定廃止されちゃったこと。
(私) David Revoy さんと Ramón Miranda さんが供給側からブラシや背景を手掛けてらっしゃる間に MyPaint Atelier みたいな資材の追加供給プロジェクトも現れました。 そういうプロジェクトを見付かり易くする計画、 たとえば GHNS ベースで管財リポジトリをつくって MyPaint にそれ用の内部クライアントを実装する予定はありますか。
(Jon) MyPaint に GHNS のクライアントとリポジトリを入れるというのは良さそうだね! ひょっとしてやってくれそうな人が居たりして。
(私) 今年の始め頃に MyPaint から派生して http://libregraphicsworld.org/blog/entry/customized-mypaint-gains-animation-for-a-new-open-movie-project :伝統的なアニメーション機能を追加する というオープンな動画プロジェクトがひとつできました。 こちらの変更が元の MyPaint の一部に還ることはおそらくなさそうですが、 アドオンという形で開発とインストールまわりを簡素化する予定はないですか。
(Jon) あちらのプロジェクトは MyPaint と方向性がはっきり違うので、 アドオンにしてもプラグインにしても良い解決法だとは思えない。 僕の見た限りで MyPaint でカスタマイズしたいと皆が言ってる部分は、 つきつめてゆけば簡素なユーザーインターフェイスと無限のキャンバスととりわけブラシエンジンとブラシということにいつもなる。 僕がやってみて良さそうなのはその辺を他のアプリケーションでも再利用しやすくすることさ。
たとえばデバイスの種類がハンドセットとスレイトのように相異なる要素を視野に入れているアプリケーションの場合や、 伝統的なアニメーションやストーリーボードのような違った目的に特化するアプリケーションの場合がそう。 これがプラグインとかアドオンとかを MyPaint 用に作るよりもむしろ MyPaint の一定の部分を再利用可能なライブラリにする方にゆくアプローチなんだ。
(私) Jon さん、 今年はもうひとつ興味深いことにあなたが GEGL プロジェクトに参加されたそうですね。 詳しいお話しを GEGL と MyPaint 関係の予定を含めてお聞かせください。
(Jon) GEGL には自由な画像処理アプリケーションの間でソフトウェアの再利用を促進し高度にドキュメントを相互流通させる大きな潜在能力があると確信している。 このフレームワークはすでに一般的な画像処理ができオンデマンド処理のようなことを可能にし非破壊編集ができ大きなビット深度が使える良いものになっている。
ここ最近の 2 ヶ月はよく使われているユーザーインターフェイスツールキット用の統合ライブラリで画像処理アプリケーションの利用が簡単になるように集中して取り組んできた。 今その手のライブラリといえば GTK+、 Qt、 Clutter がある。 ちょっとしたことで GEGL の利用を始められるようにするんだ。
GEGL と MyPaint のことではまだ何も決まってないけど、 GEGL を MyPaint で画像処理に使う案がある。 MyPaint のブラシエンジンを GEGL の処理に任せる実装というところまで考えた。 GEGL 系アプリケーションならどれからでも利用しやすくなるはず。
つぎの段階はブラシエンジンを現行のと入れ替えるのと、 GEGL 処理に従うドキュメントモデルに乗せることになりそう。 ドキュメントを再利用できるライブラリにする可能性につながるかもしれないけどまだはっきりとは言えない。 そのときはツールキット統合ライブラリの一部が描画に利用できそう。
その段階を経たあとには GEGL を何か新しい面白いことをする起爆剤みたいに使い始めてもいい。
(私) ではその後の MyPaint の将来の目玉になる特徴として、 お二方はどんなところに集中してゆきたいですか。
(Jon) 技術面からいえば Python 2 と pyGTK と GTK+ 2 から Python 3 と GObject Introspection と GTK+ 3 に移行すること。 GObject Introspection はメモリ消費で良くなってると報告があったので、 独自の Python バインディングのために SWIG に依存していたのを止められるかも。
この辺は開発にそれなりの人力を使うしテストをたくさんしなくてはいけない。 でも末端ユーザーには波乱が及ばないようにしたい。 まだ具体的に方針を決めてないんだけど、 不足を補ってくれるこういう興味深いのがあるときはいつも寄り道したくなるね。
(David) いちユーザー的に言えば 1.0 以降のブランチに入る新機能はどれも実にわくわくさせてくれる。 とくに大好きなのが「着色」と「オーバーレイ」の新しいブレンドモード、 しかもブラシに直接ブレンドモードが効くところ。
それから今後の方針に「フレーム」機能が入るそうで実にうれしい。 これでどんな大きさの作品もとりこめるし、 今みたいに 64 の倍数で機械的に丸められることもない。 こういうのがあると MyPaint で楽に固定サイズの画像 (テクスチャや映像のコマなど) を作業の流れに乗せられるし、 新規作成のときひな型 (例えば A4、 定型判、 1920×1080 など) をとり込む道が開ける。
いよいよ、 ユーザー用にすごくいいものができつつあって https://launchpad.net/~achadwick/+archive/mypaint-testing :開発版 PPA でとても簡単に追い掛けられるね。 (訳不安)
__ 訳文はここまで __
はじめは匿名で2ちゃんにでも貼り逃げしようかと思っていたので文体がアレ。

*1:通りすがりさまありがとうございます